サイレントヒル

監督クリストフ・ガンズ 出演ラダ・ミッチェル ショーン・ビーン
眠ってる間に「サイレントヒル」と呟き歩き出す娘のシャロンを心配し、ついに娘と一緒にサイレントヒルに行く決心をした母親ローズ。サイレントヒルへの道を車で走っていると、突然目の前に少女が現れ事故を起こしてしまう。気づいたときにはシャロンの姿はなく、娘を探すためにサイレントヒルを彷徨うことになった母親。そして彼女がこの街で見たものとは…

B級アクション・ミステリーという変なジャンルの馬鹿映画『ジェヴォーダンの獣』を監督したクリストフ・ガンズだから心配してたけど、原作ゲームをプレイした人なら大体満足できるであろう仕上がり。原作未プレイの人は適当に観てると話がわかんなくなりそうだけど。
原作は母親は死んでいて父親が主人公になってるがゆえに主人公の持っているたった一つの繋がりは娘だけなんだけど、映画の母親にはシャロンと現実世界に残っている夫の両者が繋がりになっている。この点については見事なアレンジだと思う。ゲームでは現実世界と隔絶された主人公は外部と連絡は取れないけど、映画では夫にのみ辛うじてコンタクトを取ることができるようになっている。ラストにその設定が十二分に発揮されているのでお見逃しなく。
監督自身がこのゲームの大ファンらしく、サイレントヒルの街並みや裏世界の再現っぷりには凄まじいものがある。街を徘徊するクリーチャーの不気味さも素晴らしい。*1シャロンの後姿を追っかけて路地に迷うシーンには心の中で拍手しまくったよ。トイレのネタも原作の熱狂的なファンだからできることだろう。音楽に至ってはゲームのものをそのまま使っている。『You’re not here.』が流れた時にはちょっと泣きそうになった。まさに曲名ぴったりのラストシーンだから。恐怖だけでなく哀しさもあるのが『サイレントヒル』である。
普通のホラー映画って観客がびっくりして結構声を上げたりするんだけど、この映画ではあまりの緊張感のせいかみんな押し黙って観てたのに内心ちょっと笑った。英語圏の外国人も数人いたけど、その人達も全く声を出さなかったのは凄い。確かにショッキングな場面でもOH!とか言ってられない凄惨さがある。なんか恐いと言うよりも別の何かがあるんだよな。

面白い映画だけど原作ファンの俺には一つだけ許せないことがある。
原作ゲームの三角頭は単なるモンスターなんかではないぞ。映画では唯の殺戮者に成り下がってるではないか。『1』をベースにした物語になんで『2』の三角頭が出るのか不安に思ってたんだが、その不安が的中した。
原作のネタバレになっちゃうけど、三角頭は『2』の主人公ジェームズが自分の罪を罰するために無意識に具現化した存在なんだよ。だから自分の罪に気づいてないときには絶対に倒せない相手だけど、罪を自覚し自分が何をすべきか決心した時にはその存在が必要なくなり、三角頭は自害するんだ。それをだなあ、ホラー映画にありがちなモンスターの親玉的存在とでしか描かないってのはないだろう。普通に頭が割れるトカゲとかにしときゃいいのに。インパクトはそれで十分だろう。

*1:怪物を火事の犠牲者を連想させる姿にしたのは巧い。