『げんしけん』8巻 受け継がれていくオタクの心

買うの忘れてた。7巻がつい最近発売されたような感覚だったので「え?もう8巻売ってんのかよ」とネットで感想を見かけて驚いた。月刊誌の単行本の発売周期を短く感じ出したら「人として終わってる」ような気がしないでもない。

で、この8巻というか荻上が登場した4巻の終わりあたりから『げんしけん』はほとんど笹原と荻上に焦点が当てられている。
この二人の最大の共通点はオタクの道を歩む覚悟が出来ていなかったことだ。笹原は先輩達のドッキリや高坂との付き合いをキッカケにオタクの道を突き進んで行くようになり、会長となった後に入部してきた荻上は笹原の背中を追いかけようとする。
でも、荻上にはオタクが嫌いな理由があって…

4年間、先輩達の指導を受けてきた笹原が今度は指導する立場になって、その指導が荻上との恋愛に繋がっていく過程が素晴らしい。
そして何より「妄想は誰にも止められないし」という笹原の言葉。スゲー告白の仕方だよな。これって荻上の妄想を肯定しているだけじゃなくて、笹原が「自分も(荻上で)妄想してる」と言ってるんだから。要するに荻上と同類ということだ。
これは1巻で斑目の言った「同類!!と言うことで(以下略)」という言葉と同じ役割を果たしている。笹原もこの「同類」という言葉がげんしけんに入る決意をする大きな要因となったが、荻上もこれをキッカケとして逃げないように覚悟を決めようとする。
荻上のトラウマ解消のためにしたことは何も特別なことではなくて、笹原自身が先輩から受け継いだことだってのが良いよな。笹原と斑目の場合は男同士だったからギャグっぽくなってたけど、同じことを男女でやるとこうも見事に恋愛に繋がっていくとは。恐るべし恐るべし。
「これじゃ普通の恋愛物だ」と批判してる人もいるけど、俺はとてもそんな風には思えない。「斑目から笹原に受け継がれたものが笹原から荻上に受け継がれていく」というのが『げんしけん』という作品の最も重要な物語だ。そしてきっと、荻上は新入部員の誰かに「同類」だということを教えていき、げんしけんは続いていくのだろう。
恋愛関係はなくてもこの物語は成立していたが盛り上げるために敢えて入れたのだろう。物語の重要なポイントはあくまで「荻上がオタクの道を歩む決意をすること」であって恋愛関係なんかじゃない。


しかし『くじびきアンバランス』がアニメ化するとはねえ。しかも田村ゆかり川澄綾子が出ないってんだから。