トリプルX ネクスト・レベル

アイス・キューブサミュエル・L・ジャクソンウィレム・デフォーという面子を揃えながらも日本未公開なのが信じられないアクション映画。監督は『007/ダイ・アナザー・デイ』のリー・タマホリ


前作『トリプルX』は『007』に代表されるスパイ映画のお約束を踏襲しながら馬鹿にし、ヴィン・ディーゼルアーシア・アルジェントという神懸り的なキャスティングによって娯楽アクション映画の傑作と成り得たわけだなんだが、この続編は……
過去に上官の命令に逆らいぶん殴って刑務所に収監されている海軍将校ダリアス。そんな彼にNSAから仕事の依頼が来てそれを了承。捜査をしてるうちにいつの間にやらダリアスに濡れ衣がかかり、さあ大変といった具合。
俺はどんな作品だろうと出来るだけ好意的に観ようとするタイプの人間だからこういう映画でも普通に楽しめるけど、そうじゃない人は怒っちゃう人もいるんじゃないのかコレ?これって前作の一部キャラクターがいるだけで『トリプルX』の続編とは言えんだろ。
だってコレ、『クロスゲージ』じゃん。ジャンル違わねーか?って、『クロスゲージ』なんて映画知ってるやつはほとんどいないか。
「長いムショ暮らしで女に飢えてるように見せかけて、本当はジャンクフードに飢えてた」ってネタがあるし『クロスゲージ』を意識したのは間違いないだろう。SWATの服をぶん取って逃亡のネタもかぶってる。


別に過去の映画を真似たって構わんが、続編を作るからには前作の良さというものが何なのかをハッキリと理解して作って欲しいよなぁ。
前作の面白さの肝となったのは「チンピラが持ち前の度胸と腕っ節で従来のスパイが出来なかったことをする」ことだったのに、今回は優秀な軍人が普通に活躍する話じゃねーかよ。ロブ・コーエン監督、ヴィン・ディーゼル主演(『トリプルX』と同じ組合わせ)『ワイルドスピード』も続編になったら普通のバディムービーとなってたし*1、この二人の映画の続編ってどうしてこんなことになるんだろう。表面的な不良っぽさと派手なアクションだけを真似て中身がどういうものだったのかを理解できてないと思う。ボンドガールに相当する女がいないことからも前作への理解が足りないことがわかる。てゆーか監督のリー・タマホリは仮にも『007』シリーズの1つを撮った人間なんだからスパイ映画だった前作の魅力を理解できてないというのは努力を怠ってるだけにしか思えんぞ。
アクションに関してもクライマックスの一部が完全にCGアニメと化しているのも興醒め。これで制作費が前作より多いってんだからなあ。


批判したけどハリウッドの娯楽アクション映画としてはそれなりに面白いと思うので俳優陣のファンの人なら観ても損はしないだろう。
ちなみに今週の木曜洋画劇場リー・タマホリの『ザ・ワイルド』だ。これは木曜洋画としても普通の映画としても面白いので是非観よう。

*1:三作目の『ワイルドスピードX3 TOKYO DRIFT』は密かに期待している