麻帆良祭 恋愛パートにおける影の主役

エヴァンジェリンは誰かに直接呼びかける際、相手によってその呼び名を使い分けている。
例えば、刹那に対しては基本的には「刹那」だけど、明日菜に対しては「神楽坂明日菜」とフルネームなのだ。
ネギに関しては現在は「ぼーや」ばっかりだけど、3巻では「(ネギ)先生」「ネギ・スプリングフィールド」「ぼーや」を使いわけてて、彼女のネギへの複雑な想いが見て取れる。捕縛結界あたりからの呼称の変わり具合が、彼女の威厳と愛情が伝わってきて魅力的すぎ。


そして何よりナギ・スプリングフィールドに対してですよ。
意外にも作中で「ナギ」と初めて呼んだのは、年齢詐称薬を飲んで成長したネギに対してである。それまでは第三者との会話ですら「ナギ」とは言わず、「サウザンドマスター」とか「奴」とか呼んでいた。夢の中ですら「サウザンドマスター」と呼びかけている。
麻帆良祭開催前にでっかくなったネギを見てほんの一瞬、願いが叶ったかと思うも結局は幻術。ここからネギにナギの代役を演じるように提案した場面にかけては、コメディタッチだけど実は物凄く切ない場面だと俺は思っている。


幻術に頼って心の隙間を埋めようとするエヴァ様だったけど、武道会にて彼女の希望に現実味が帯びて来る。アルビレオ・イマの登場である。彼が現れたことにより彼女の心には大きな変化が生じてくる。
今までナギのことを「サウザンドマスター」とか「奴」とか呼んでいた彼女が、独り言とはいえ「サウザンドマスター…ナギ…」とか言い始め、103時間目に至っては

私は不死者だ。お前が生きてさえいれば、いつか必ずどこかで会える。
お前がじじいになる前に探し当ててやる、サウザンドマスター
待っていろ ナギ…!
103時間目 山下慶一をぶちのめして

ですよ。
この前向きな気持ちに応じるかのように決勝戦後に限られた時間とはいえ、本物のナギに逢うことができた彼女の第一声は
「ナギ!!」


ナギと逢えないことを悲観して自分から距離をおくかのように夢の中ですら彼の名を呼ぶことなく、自分の弟子をナギの代替物にしようとしていたエヴァ様が…「ナギ!!」ですよ。
これは泣けるだろ、常識的に考えて。


137時間目でデートの約束を強制履行させるチケットを破棄したのも、別にネギのことを想ってただけではない。自分自身にけじめをつけるためにやったことなのだ。そして仕舞いにゃ、ネギをネギとして見つめ、相談料とか言って唇を奪っちゃう始末。痺れるぜ!


のどかに夕映、明日菜、亜子…数々の恋愛模様が描かれてきた麻帆良祭。その中で最もドラマチックだったのはエヴァンジェリンの恋愛だろう。


余談だけど、25時間目でナギに対してチャチャゼロを使って告白したエヴァンジェリンの愛らしさは反則だと思う。あの一連の回想場面は何故か松岡由貴の声ではなく、釘宮理恵の声で脳内再生してしまう…